2026.09.17

「就活セクハラ」という言葉を、最近耳にする機会が増えてきました。採用面接の場で、学生に対して不適切な言動をしてしまう——そんなトラブルが社会問題として取り上げられ、ついに法律で対応が義務化されることになりました。
2026年10月から、就活セクハラへの対策が、会社に対して法律上の義務として課されます。「うちはちゃんとした採用をしているから大丈夫」と思っていても、面接担当者の何気ない一言が問題になるケースは少なくありません。今日はそんな就活セクハラについて、経営者のみなさんに知っておいていただきたいことを、1つずつ丁寧にお伝えしたいと思います。
就活セクハラとは、採用活動の場(説明会・面接・インターンシップなど)において、会社側(面接担当者・社員など)が就職活動中の学生に対して行う性的な言動のことを指します。英語では “sexual harassment in job hunting”、あるいは就職活動(Job hunting)のハラスメントとして国際的にも問題視されています。
具体的には、こんな言動が就活セクハラにあたります。
「面接で緊張をほぐそうと思って聞いただけ」「昔からこういう雰囲気でやってきた」という感覚が、学生にとっては深刻なハラスメントになり得ます。悪意がなくても問題になる——これが就活セクハラの怖いところです。
これまで、職場内のセクシュアルハラスメント(セクハラ=性的な嫌がらせ)については、男女雇用機会均等法(だんじょこようきかいきんとうほう=男性と女性が職場で平等に働けるよう定めた法律)によって、会社に防止措置が義務付けられていました。しかし、採用候補者=就活生は「労働者」ではないため、これまでこの法律の保護の対象外とされてきました。
2026年10月の法改正により、就職活動中の学生に対するセクハラ(就活セクハラ)についても、会社が防止措置を講じることが義務となります。対象は、すでに雇っている従業員だけでなく、採用選考・インターンシップ・会社説明会などの場で接触するすべての就職活動者です。
具体的に会社が義務として求められる防止措置は、職場内のセクハラ対策と同じ枠組みになります。主なものを挙げると、次のとおりです。
正確な措置の要件や詳細については、法改正に伴う厚生労働省の指針(ガイドライン)が順次示されますので、最新情報を確認するか、専門家にご相談ください。
この記事を書いている社労士です

2026年10月の法改正で、採用活動の場での就活セクハラ防止が会社の義務となります。面接担当者へのNG言動の周知、就業規則の見直し、相談窓口の整備など、今から準備できることを社労士の視点で解説しました。お気軽にご相談ください。
特定社会保険労務士/キャリアコンサルタント
山本 美紀
ミッシュ社会保険労務士事務所 代表/元教師の教育型労務コンサル
最終更新日:2026年9月17日
初回相談無料
研修でこの話をすると、「うちの面接担当者に限ってそんなことはしない」とおっしゃる経営者の方がいます。でも、顧問先の会社でも「まさかうちで」というケースは実際に起きています。問題は、ハラスメントをしようという悪意ではなく、「何がハラスメントにあたるか」を知らないことにある場合がほとんどです。
特に気をつけていただきたい場面を整理すると、次のとおりです。
「面接の場で何を聞いてはいけないか」「どんな言動が問題になるか」——これを面接担当者が正しく理解していないまま採用活動をしていることが、最大のリスクです。
それでは、会社として具体的に何から手をつければいいのでしょうか。1つずつ見ていきましょう。
1. 面接担当者への研修・情報共有
まず最初にやるべきことは、面接に関わる全員が「就活セクハラとは何か」「何がNGか」を正しく理解することです。経営者・人事担当者はもちろん、現場の社員が面接に同席する場合も例外ではありません。「知らなかった」では済まされない時代になります。
2. 採用面接で聞いていい質問・聞いてはいけない質問のリストを作る
口頭だけの申し合わせは忘れます。「面接でこの質問はNG」という一覧を作って、面接担当者に配布・確認しておくことをお勧めします。たとえば、交際・結婚・出産・家族構成・宗教・思想に関する質問は、採用とは無関係であり、セクハラや就職差別にもつながるとして、もともと控えるべきとされてきました。これを明文化しておくことが大切です。
3. 相談窓口と対応手順を就業規則(しゅうぎょうきそく=会社のルールブックのようなもの)に明記する
就活セクハラの相談を受け付ける窓口と、問題が起きたときの対応手順を就業規則や社内規程に盛り込んでおくことが、義務化に対応するための基本的な準備です。すでに職場内のハラスメント対策を就業規則に定めている会社は、就活生(採用候補者)もその対象に含まれるよう記載を見直すことが必要になります。
就業規則の整備については、会社ごとの状況によって対応が変わりますので、ぜひ専門家にご相談ください。
就活セクハラへの対応を「法律に言われたから仕方なくやる」ととらえるか、「自社の採用活動をきちんとしたものにする機会」ととらえるか——その姿勢が、実は採用の質にも直結します。
就活生にとって、面接はその会社の「顔」を見る場所です。面接の場で不快な思いをした学生は、入社しないだけでなく、SNSや口コミで広める可能性もあります。逆に、安心して話せる面接だったと感じた学生は、会社への信頼を持って入社してくれます。
「会社を守ること」と「就活生を守ること」は、対立するものではなく、同じ方向を向いています。採用の場を安心できる場所に整えることが、結果として人材の定着にもつながります。
2026年10月から義務化される就活セクハラ対策について、ポイントを整理します。
義務化まであと少し時間があります。「うちは大丈夫だろうか」と少しでも気になった方は、就業規則の内容確認や担当者研修の実施を、ぜひ一度専門家と一緒に確かめてみてください。まずは「知ること」——それが、会社と働く人の両方を守る第一歩です。
参考資料
厚生労働省「職場におけるハラスメント対策(セクシュアルハラスメント)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r06.html
厚生労働省「男女雇用機会均等法の改正について(2025年)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/danjokintouhou/
この記事は、社会保険労務士として日々の労務のご相談のなかで実際にお受けするご質問をもとに書いています。最新の法令や個別のご事情については、お気軽にご相談ください。
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