2026.10.19

毎年10月が近づいてくると、毎年「今年の最低賃金はいくらになるの?」とご相談をいただくことが多くなります。はじめて人を雇った経営者さんや、パートさんを数名雇っている小さな会社さんにとって、最低賃金は「自社に関係ある話」と分かっていても、いざ確認しようとすると「どこを見ればいいの?」「うちの計算方法、合ってる?」と戸惑うことも少なくありません。今日はそんな最低賃金について、最新情報と正しい計算の考え方、10月から気をつけていただきたいポイントをお伝えします。
最低賃金(さいていちんぎん=会社が従業員に払わなければならない1時間あたりの賃金の最低額)は、最低賃金法(さいていちんぎんほう)によって定められているルールです。「時給はこれ以上払ってください」という法律上の下限額であり、これを下回る賃金での労働契約は、たとえ本人が合意していても無効となります。正社員・パート・アルバイト・派遣社員など、雇用形態を問わず全員に適用されます。
最低賃金には大きく2種類あります。
まずは「自分の会社が何の業種か、特定最低賃金の対象になっていないか」を確認することが大切です。
厚生労働省の発表によると、2025年度(令和7年度)の地域別最低賃金は、全国加重平均額が時給1,055円となりました(前年度比51円の引き上げ)。全国で最も高いのは東京都の1,163円、最も低い地域でも951円となっており、各都道府県で水準が異なります。
なお、本記事の執筆時点(2026年10月)における2026年度(令和8年度)の最低賃金については、厚生労働省の中央最低賃金審議会での審議が進んでいます。改定額と発効日は各都道府県労働局が官報・ホームページで公示しますので、必ず最新情報を厚生労働省のページでご確認ください。毎年10月1日前後に発効する地域が多いため、9月中に確認・準備しておき、各都道府県の発効日以降は、会社の給与計算締め切り日に向かって賃金額を変更するなど対応していきます。
最低賃金と比較するときに最もよく誤解が起きるのが「計算の対象となる賃金の範囲」です。給与の全額を時給換算すればいいわけではなく、最低賃金との比較から除外できる賃金が法律で決まっています。ここを正確に押さえておかないと、「払っているつもりが実は最低賃金を下回っていた」という事態になりかねません。1つずつ確認していきましょう。
比較対象から除外できる賃金(最低賃金の計算に含めなくてよいもの)
つまり、基本的な月給やパートの時給など「通常の労働に対して支払われる基本的な部分」が比較の対象になります。手当の名目が複雑な会社ほど、一度整理して確認することをおすすめします。
雇用形態別の時給換算の考え方
計算した時給換算額が、お住まいの都道府県の最低賃金を下回っていないかをチェックします。正確な計算式や個別のケースについては、都道府県労働局または社会保険労務士(しゃかいほけんろうむし=労働・社会保険に関する法律の専門家)にご確認されることをおすすめします。
この記事を書いている社労士です

最低賃金は毎年10月ごろに改定されます。時給換算の正しい方法や、通勤手当・賞与など除外できる賃金の範囲を解説しています。9月中に全従業員の賃金を確認し、発効日までに必要な対応を整えておきましょう。お気軽にご相談ください。
特定社会保険労務士/キャリアコンサルタント
山本 美紀
ミッシュ社会保険労務士事務所 代表/元教師の教育型労務コンサル
最終更新日:2026年10月19日
初回相談無料
最低賃金の改定は毎年10月ごろに発効します。「10月になってから対応しよう」と思っていると、発効日を過ぎてから慌てることになります。9月中に次のことを確認・準備しておきましょう。
なお、最低賃金を下回る賃金しか払っていなかった場合、会社は差額を遡って支払う義務が生じます。また、最低賃金法違反は罰則(50万円以下の罰金)の対象にもなります。「知らなかった」では済まない話ですので、早めの確認が何より大切です。
私が顧問先や相談会でよく受ける質問に「うちは社員さんに交通費を月額で払っているけど、最低賃金との比較はどう計算するの?」というものがあります。先にお伝えしたとおり、通勤手当は最低賃金との比較から除外します。「通勤手当を含めれば最低賃金を超えている」という計算は誤りですので、注意が必要です。
また「本人が『この給与でいい』と言ってくれているから大丈夫」というケースも時々お見かけします。しかし最低賃金は、本人の同意があっても下回ることは認められません。法律上の最低ラインですので、当事者間の合意よりも法律が優先されます。
さらに、介護業界の経営者さんからは「処遇改善加算(しょぐうかいぜんかさん=介護職員の賃金を引き上げるために事業者に交付される加算)で賃金を上げているから、最低賃金は関係ない」と思っていたというお声もあります。処遇改善加算による賃金引き上げは大切な取り組みですが、最低賃金のルールは加算の有無に関係なく全ての従業員に適用されます。加算を受けていても、改めて全従業員の時給換算チェックをしていただくことをおすすめします。
最低賃金は、会社と従業員の双方を守るための大切なルールです。毎年10月の改定は、「自社の賃金体系を見直す良い機会」と前向きに捉えていただけると嬉しいです。
改めて整理すると、10月前に動いていただきたいことは次の3点です。
「計算の仕方が合っているか不安」「うちの業種に特定最低賃金はあるの?」「就業規則の賃金規程も直した方がいい?」など、疑問に思ったことはどうぞ遠慮なくご相談ください。
特に、月給制の方や、時給制でも手当は月給で支払っている場合は、賃金単価を時給換算にし直さなければならないので、その計算、会社の「月平均所定労働時間数」が必要となります。会社の賃金規程に具体的に「月平均所定労働時間数」は記載されていますか?
会社を守ることと、そこで働く方を守ることは、決して対立しません。適切な賃金のしくみを整えることが、信頼できる職場づくりの第一歩になります。一緒に考えていきましょう。
参考・出典
この記事は、社会保険労務士として日々の労務のご相談のなかで実際にお受けするご質問をもとに書いています。最新の法令や個別のご事情については、お気軽にご相談ください。
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