2026.07.06

「従業員が体調不良で長く休んでいる。どうすればいいのか分からない」——そんなご相談を、顧問先の経営者さんからいただくことがあります。はじめて休職者が出た会社では、「何から手をつければいいか」「いつまで待てばいいのか」「復職させていいタイミングはいつか」と、判断に迷われることが多いです。今日はそんな「休職から復職まで」の流れを、一つずつ丁寧にお伝えしたいと思います。
まず前提として押さえておきたいのが、「休職」は法律で定められた制度ではない、という点です。育児休業(いくじきゅうぎょう)や介護休業(かいごきゅうぎょう)は育児・介護休業法という法律で定められていますが、「病気やけがで仕事を休む休職」は、会社が自社の就業規則(しゅうぎょうきそく=会社のルールブックのようなもの)で定めて初めて使える制度です。
つまり、就業規則に休職の規定がなければ、休職という選択肢が存在しないことになります。「うちの会社は従業員が10人未満だから就業規則を作っていない」というケースも少なくありませんが、そうした場合に従業員が長期療養が必要になると、会社も本人も困る事態になりかねません。
就業規則の整備は、トラブルが起きてからではなく、できるだけ早い段階で行うことが大切です。
従業員から「体調不良で休みたい」という申し出があったとき、または欠勤が続いているときに、会社として確認・対応すべきことを順に見ていきましょう。
休職期間中、会社はどのように関わればよいのでしょうか。一つずつ見ていきましょう。
過度な連絡は避ける、というのが基本です。特にメンタルヘルス上の理由で休んでいる場合、頻繁な業務の確認や「いつ戻れる?」という問いかけは、本人への大きな負担になります。「連絡は月1回・メールのみ」など、休職開始時に決めたルールを守ることが大切です。
一方で、まったく連絡を取らないのも問題です。休職期間が長くなるほど、復職に向けた情報共有や準備が遅れます。定期的に「体調はいかがですか」「何かご連絡があれば遠慮なく」程度の短い確認連絡を入れておくと、本人も孤立感を感じにくくなります。
また、社会保険料の会社負担分は休職中も発生します。給与を支払っていない期間でも、健康保険・厚生年金保険(こうせいねんきんほけん)の保険料は労使折半(ろうしせっぱん=会社と従業員で半分ずつ負担すること)が続きます。会社負担分だけでなく、本人負担分の支払い方法(毎月会社に振り込んでもらうなど)も、休職開始時に決めておきましょう。
休職期間が終わりに近づいてきたとき、または本人から「そろそろ戻りたい」と申し出があったとき、会社はどのように判断すればよいのでしょうか。
まず主治医による復職可の診断書を提出してもらうことが第一歩です。ただし、主治医は「日常生活が送れる状態かどうか」を判断する立場であり、「その職場の業務に戻れるかどうか」まで踏み込んで診ているわけではないケースもあります。
そこで多くの会社では、産業医(さんぎょうい=従業員の健康管理を専門に担う医師)や会社が指定した医療機関への受診を経て、最終的な復職の判断をする仕組みを就業規則に定めています。産業医の選任義務は常時50人以上の事業場に生じますが、それ以下の小規模な職場でも、地域の産業保健総合支援センター(さんぎょうほけんそうごうしえんセンター)を活用することで、無料で専門家のアドバイスを受けることができます。
復職を判断するうえで確認したい主なポイントは、次のとおりです。
「本人が戻りたいと言っている」だけで見切り発車するのは、再休職のリスクを高めます。会社・本人・医療のそれぞれが同じ方向を向いた状態で復職を進めることが、長く働き続けてもらうための近道です。
この記事を書いている社労士です

従業員が休職した際、会社は診断書の取得・休職期間の明示・社会保険手続きの案内など、開始時から仕組みに沿った対応が求められます。復職の判断は主治医の診断書を基本としつつ、産業医や復職支援プランも活用しながら、会社・本人・医療が連携して進めることが再休職の防止につながります。こうした休職・復職のルールをあらかじめ就業規則に整備しておくことが、会社と従業員の双方を守る土台となります。お気軽にご相談ください。
特定社会保険労務士/キャリアコンサルタント
山本 美紀
ミッシュ社会保険労務士事務所 代表/元教師の教育型労務コンサル
最終更新日:2026年7月7日
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復職してすぐに元の業務・時間・負荷に戻すのは、本人への大きな負担になります。多くの場合、段階的に業務量を戻していく「試し出勤」や「リハビリ出勤」と呼ばれる取り組みが有効です。
厚生労働省は「職場復帰支援の手引き」のなかで、職場復帰を5つのステップに整理しています。簡単にまとめると、次のような流れです。
復職後のフォローアップは特に大切で、「戻ってきたらそれで終わり」ではありません。定期的な面談で本人の状況を確認しながら、業務量・業務内容を少しずつ元に戻していくプロセスが、再休職を防ぐうえで重要です。
また、復職後の配慮として短時間勤務や深夜業・時間外労働の制限を設けることも考えられます。こうした措置を就業規則や復職支援プランに明記しておくと、現場の上司も対応しやすくなります。
就業規則に定めた休職期間が満了しても復職できない場合、就業規則の規定によっては「自然退職」や「解雇」の手続きに移ることになります。これはあくまで就業規則の規定に基づく手続きであり、会社の一方的な通告ではありません。
ただし、この場面の対応は慎重さが求められます。
「就業規則にそう書いてあるから」という理由だけで機械的に処理してしまうと、後日トラブルになることがあります。休職期間満了が近い場合は、必ず専門家(会社の顧問社労士等)にご相談ください。
休職から復職までのプロセスを整理すると、会社がやるべきことは「その場しのぎの対応」ではなく、あらかじめ仕組みを整えておくことだと分かります。
就業規則に休職・復職のルールを明記しておく、診断書の提出・社会保険手続きの案内・連絡のルールを決めておく、復職支援プランを用意しておく——こうした備えが、いざというときに会社も従業員も守ることにつながります。
「従業員のことが心配だから手厚く対応したい」という経営者の思いと、「会社のルールをきちんと守りたい」という姿勢は、対立するものではありません。正しい仕組みを整えることで、双方が安心して働き続けられる職場環境を目指していきましょう。
「うちの会社は就業規則がない」「休職規定があるか分からない」という方も、ぜひ気軽にご相談ください。また、「うちはこれまで病気で長期に休んだ社員がいないから」といった考えから、就業規則の休職規定の内容が十分でない会社は、早めに就業規則に見直し、制度の充実に目を向けていただくことが大切です。
「備えあれば憂いなし」― 一緒に確認して、必要な備えを整えていきましょう。
参考・出典
・厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195.html
・厚生労働省「産業保健総合支援センター(さんぽセンター)」
https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/tabid/1577/Default.aspx
この記事は、社会保険労務士として日々の労務のご相談のなかで実際にお受けするご質問をもとに書いています。最新の法令や個別のご事情については、お気軽にご相談ください。
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