2026.08.10

「賞与を出したら、社会保険料はどうなるの?」「毎月の給与とは計算方法が違うって聞いたけど、正直よく分からない……」。そんなふうに頭を抱えている経営者の方は、とても多いと感じています。
賞与(いわゆるボーナス)は、支払うタイミングが給与とは違うぶん、社会保険料の扱いも少し異なります。今日はそんな「賞与にかかる社会保険料の基本」についてお話ししたいと思います。難しい言葉を使わず、できるだけかみ砕いてご説明しますね。
まず前提として、賞与にも社会保険料(しゃかいほけんりょう=健康保険・厚生年金保険などの保険料)はかかります。「給与は毎月引いているけど、ボーナスは別でいいの?」というご質問をよくいただきますが、賞与もしっかり対象です。
対象となるのは、「健康保険料」と「厚生年金保険料(こうせいねんきんほけんりょう=会社員が加入する年金の保険料)」、そして「介護保険料(かいごほけんりょう=40歳以上の方が対象)」です。また、雇用保険料(こようほけんりょう=会社が従業員のために積み立てる失業への備え)も賞与から控除します。
つまり、毎月の給与と同じように、賞与を支払うときにも保険料を計算して納める必要があります。これは法律で定められた義務ですので、ご注意ください。
ここが少し大事なポイントです。毎月の給与にかかる社会保険料は「標準報酬月額(ひょうじゅんほうしゅうげつがく=給与を一定の幅でまとめた”ものさし”の金額)」をもとに計算しますが、賞与は違います。
賞与にかかる社会保険料は、「標準賞与額(ひょうじゅんしょうよがく)」をもとに計算します。標準賞与額とは、実際に支払った賞与の額から1,000円未満を切り捨てた金額のことです。たとえば、320,500円の賞与を支払った場合、320,000円が標準賞与額になります。
この標準賞与額に、毎月の給与と同じ保険料率をかけて計算します。保険料は会社と従業員が折半(はんぶんずつ)で負担するのが原則です。従業員負担分は賞与から天引きし、会社負担分とあわせて年金事務所などに納めます。
なお、保険料率は健康保険の組合や都道府県によって異なる場合があります。具体的な料率や計算結果については、ぜひ専門家にご確認いただくことをおすすめします。
賞与にかかる社会保険料には、上限額が設けられています。これは「いくら高額な賞与を支払っても、保険料の計算対象となる額には天井がある」というルールです。
現時点(2026年7月時点)では、健康保険の標準賞与額の上限は年度累計で573万円、厚生年金保険は1回あたり150万円とされています。ただし、この上限額は法改正によって変わることもありますので、最新の情報は日本年金機構や協会けんぽのホームページ、または社会保険労務士にご確認ください。
「うちはそんな高額な賞与を出していないから関係ない」と思われるかもしれませんが、上限の存在を知っておくこと自体が大切です。制度の全体像を把握しておくと、いざというときに慌てずに済みます。
この記事を書いている社労士です

賞与にかかる社会保険料は、毎月の給与とは計算のしくみが異なります。標準賞与額の考え方や上限額のルール、支払後5日以内の賞与支払届の提出義務など、経営者が知っておくべき基本をまとめました。正しく理解して運用することが、会社と従業員の双方を守ることにつながります。お気軽にご相談ください。
特定社会保険労務士/キャリアコンサルタント
山本 美紀
ミッシュ社会保険労務士事務所 代表/元教師の教育型労務コンサル
最終更新日:2026年8月10日
初回相談無料
賞与を支払ったあとには、「賞与支払届(しょうよしはらいとどけ)」という書類を年金事務所(または加入している健康保険組合)に提出しなければなりません。これは、「いつ・誰に・いくらの賞与を払ったか」を届け出るための書類です。
提出期限は、賞与を支払った日から5日以内とされています。月次の給与と違い、支払い後すぐに対応が必要になりますので、支払いスケジュールを決めたら早めに準備を進めておくと安心です。
また、賞与を支払う予定だったが実際には支払わなかった場合にも、「賞与不支給報告書(しょうよふしきゅうほうこくしょ)」の提出が必要になります。「支払わなかったから何もしなくていい」というわけではありませんので、ご注意ください。
具体的には、次のような点を確認しながら手続きを進めていただくことになります。
顧問先からも「ボーナスを出したあとに届け出が必要だと知らなかった」というお声をよくいただきます。知らなかったでは済まないことも多いので、事前に把握しておくことが大切です。
ここまでの内容を整理すると、次のことが押さえるべき基本になります。
「給与計算はなんとかやっているけど、賞与のときだけ不安になる」という経営者の方は少なくありません。賞与は支払う頻度が少ないぶん、手続きに慣れにくいのも当然のことです。
賞与にかかる社会保険料は、毎月の給与と計算のしくみが異なります。標準賞与額のルール、上限額の存在、支払後5日以内の届け出義務——これらを知っているだけで、慌てることがぐっと減ります。
「正確に計算できているか自信がない」「手続きを自分でやっているけど合っているか不安」という場合は、社会保険労務士に是非ご相談ください。制度を正しく理解して運用することは、会社を守ることでもあり、従業員の大切な保障を守ることでもあります。どちらか一方のためではなく、両方のために、きちんと整えていきましょう。
毎月の給与から社会保険料を控除することは、将来受け取る年金(主に老齢年金)に対して、漏れることなく加入し、保険料も納めているという証にもなります。同様に、賞与についても社会保険料を納めるということは、もちろん、将来納めた額に対して、年金の給付額にも反映されるということで疎かにしてはいけません。
難しそうに思える手続きも、一緒に整理していけば必ず前に進めます。「うちの場合はどうなる?」と気になることがあれば、どうぞお気軽にお声がけください。
【出典】
・日本年金機構「賞与支払届の提出」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/choushuu/20120511.html
・全国健康保険協会(協会けんぽ)「賞与にかかる保険料」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/sb3150/r34/
この記事は、社会保険労務士として日々の労務のご相談のなかで実際にお受けするご質問をもとに書いています。最新の法令や個別のご事情については、お気軽にご相談ください。
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